Chapter 2
衝撃の変身!イケメン猫現る
ある日、コネクトが帰宅すると、部屋には見知らぬイケメンが!なんと、ねっこが人間の姿に変身していたのだ。混乱するコネクトに、ねっこはクールに自己紹介。子猫とイケメン、二つの姿を持つねっことの奇妙でドタバタな共同生活が幕を開ける。秘密の同居生活は波乱の予感。
「えっ? えぇぇぇぇぇっ?!」
目の前で繰り広げられている光景が、私の脳みそをぐちゃぐちゃに掻き回した。さっきまで私の足元で、まるまるとした毛玉みたいに眠っていたはずの、あの愛らしい子猫、ねっこが……。
「……人間……?」
信じられない、という言葉が喉の奥に張り付いて、どうにも上手く出てこない。だって、目の前にいるのは、紛れもない、紛れもないイケメンなのだ。整った顔立ち、きりっとした眉、そして何より、吸い込まれそうなほど深い青い瞳。すらりとした長身で、着ているのはなぜか私の部屋着のTシャツ。でも、そのTシャツすら、まるで高級ブランドの衣装のように着こなしている。
「……あの、ねっこ……?」
震える声で、私はそのイケメンに話しかけた。だって、他に誰がいるっていうの? 昨日まで私の部屋で、私の膝の上で丸まっていた、あの小さな命が、今、私の目の前で、こんなにも完璧な人間になって立っている。
「…ああ、そう呼ばれることもある」
イケメンは、どこか冷ややかな、けれど耳に心地よい声で答えた。その声も、ねっこが甘える時に出す、あの可愛らしい鳴き声とは似ても似つかない。
「え、えっと、あの、どうして……? というか、いつから……? さっきまで、あんなに小さかったのに……!」
私のパニックは最高潮に達していた。頭の中が「???」「!!!」で埋め尽くされている。ねっこが、人間になるなんて、そんなSFみたいな話、ある? いや、あるのかもしれないけど、それは私の人生で起こることじゃないはずだ。
「…君が、僕を拾ってくれたからだ」
イケメンは、私の部屋のソファに、まるで自分の家のように腰を下ろした。そして、私のTシャツを、まるで自分のもののように着こなしている。その姿が、なんだか妙にリアルで、私はさらに混乱する。
「え、拾ったから……? それで、人間になれるの? どういうこと? 魔法? それとも、宇宙人?」
「…どちらでもない。まあ、強いて言うなら、君の優しさが、僕をここに導いた、とでも言っておこうか」
彼は、私の目をまっすぐに見つめて言った。その瞳には、先ほどの猫のねっこが持っていた、あの無邪気な輝きと、それ以上の何か、深い思慮のようなものが宿っているように見えた。
「優しさ……? いや、でも、でも、まだ信じられない! だって、ねっこは、可愛い猫ちゃんで……!」
「…猫、か。確かに、君が僕を拾ったのは、猫だったからだろう」
彼は、少しだけ寂しそうな、それでいてどこか楽しんでいるような表情を浮かべた。そして、私のTシャツの裾を、猫の時と同じように、指先でちょいちょいと弄び始めた。
「…しかし、君が困っているなら、僕が助けてやろう」
「助けて……? 何のこと?」
「君の、その、混乱を、鎮める、ということだ」
彼は、ゆっくりと立ち上がると、私の目の前に歩み寄ってきた。そして、私の肩に、そっと手を置いた。その手は、驚くほど暖かく、そして、どこか安心するような感触だった。
「…僕は、これから、君の、そばにいる。君の、秘密を、守るために」
「秘密……? 私の秘密? いや、でも、あなたの秘密の方が、よっぽど大きいと思うんだけど……!」
「…それは、そのうち、分かるだろう。それよりも、まずは、君に、僕の名前を、教えよう」
彼は、私の顔を覗き込むようにして、微笑んだ。その笑顔は、まるで宝石のように輝いていて、私の心臓は、またしてもバクバクと音を立て始めた。
「…僕の名前は、ねっこ。君が、そう呼んだ、猫の、名前だ」
「……えぇぇぇぇっ?!」
結局、私は「えぇぇぇぇっ?!」と叫ぶことしかできなかった。ねっこは、猫の時と同じ名前を名乗った。そして、私の秘密を守ると言った。一体、何がどうなっているんだ? 私の日常は、一体どこへ行ってしまったんだ?
「…驚かせて、すまない。だが、これが、僕の、真実だ」
ねっこは、そう言うと、私の肩から手を離し、再びソファに座った。そして、まるで何事もなかったかのように、私の部屋を見回している。
「…君の部屋は、もう少し、片付けた方が、いいな」
「ちょ、ちょっと待って! 片付けとか、そういう問題じゃなくて! あなたは、一体、何者なの? どうして、猫になれるの? どうして、人間になれるの? そして、なぜ、私のTシャツを着ているの? 理由を、全部、説明して!」
私は、必死に質問を浴びせた。ねっこは、私の言葉を、一つ一つ、静かに聞いていた。そして、ゆっくりと口を開いた。
「…それは、長い、話になる。だが、君が、望むなら、話そう」
彼は、窓の外に目をやり、遠い空を見つめた。その横顔は、どこか儚げで、私は、彼の言葉に、吸い寄せられるように耳を傾けた。
「…僕は、ある、力を持っている。その力で、姿を、変えることができる」
「姿を……? 猫と、人間の?」
「…そうだ。そして、その力は、僕が、君に、拾われた、時に、強まった」
「拾われた、時に?」
「…君の、優しさが、僕を、進化させた、のかもしれない」
進化、か。猫が、人間になるなんて、進化と呼ぶべきなのか? いや、でも、彼の言葉は、なんだか、とても説得力があった。
「…君は、僕の、恩人だ。だから、君の、秘密を、守る。そして、君を、守る」
「私の秘密……? ねっこ、あなたは、私の秘密なんて、知らないはずじゃ……」
「…知っている。君が、僕を、隠そうと、していること。そして、僕に、惹かれていること」
「えっ……」
まさか、そんなことを、彼が、見抜いているなんて。私は、顔が、真っ赤になった。彼に、惹かれている、なんて、そんなこと、誰にも、言ったことないのに。
「…心配、するな。僕も、君を、見守っている」
彼は、そう言うと、私の顔を、優しく撫でた。その手は、先ほどの猫の時と同じように、暖かく、そして、安心する感触だった。
「…さて、そろそろ、猫の姿に、戻る、時間だ」
「え? 猫に?」
「…ああ。君の、友人が、来る、だろうから」
「友達? ジャベリンのこと?」
「…そうだ。彼女は、鋭い。僕の、正体に、気づく、かもしれない」
まさか、ジャベリンが、そんなに早く、私の秘密に、気づくなんて。私は、慌てて、部屋の中を見回した。
「でも、でも、どうしよう! もし、ジャベリンに、見られたら……!」
「…心配、するな。僕が、うまく、やる」
ねっこは、そう言うと、私のTシャツを脱ぎ始めた。そして、あっという間に、あの、愛らしい、毛玉のような、猫の姿に、戻った。
「……ねっこ……」
私は、猫になったねっこを、見つめながら、呟いた。彼の、二つの顔。猫の、愛らしさと、人間の、クールさ。どちらも、私を、惹きつけてやまない。
「…さて、君は、僕が、猫であることを、彼女に、説明しろ」
ねっこは、そう言うと、私の足元に、ちょこんと座った。その瞳は、猫の時の、あの、無邪気な輝きに、戻っていた。
「……うん。分かった」
私は、決意を固めた。この、奇妙で、ドタバタな、共同生活。そして、この、秘密。私は、この秘密を、守り抜く。そして、ねっこと、一緒に、この、不思議な、日常を、生きていく。
「…さあ、来客の、準備だ」
ねっこは、そう言うと、私の部屋のドアの方を、じっと見つめた。その瞳には、かすかに、挑戦的な、光が、宿っていた。
「……うん。準備、しよう」
私は、ねっこの、言葉に、頷いた。これから、一体、どんなことが、起こるのだろうか。私の、(ちょっと変わった)恋愛は、一体、どこへ向かうのだろうか。
その時、ドアをノックする音が、響いた。
コンコン、コンコン。
「コネクトー? いるー? ジャベリンだよー! ちょっと、お邪魔するねー!」
ジャベリンだ。私は、深呼吸をした。そして、ねっこの、頭を、優しく、撫でた。
「……大丈夫。きっと、うまくいく」
ねっこは、私の手に、顔を、すり寄せた。その温かさに、私は、少しだけ、安心した。
「…ああ。僕も、そう、思う」
彼の、声は、猫の、鳴き声に、混じって、かすかに、聞こえた。
さあ、秘密の、同居生活。波乱の、幕開けだ。